星空を眺めるのが好きだ。少し前ではあるが、私の星空への熱は相当なものだった。東北の実家に帰省した折、「しぶんぎ座流星群」が見れるということで、星を眺めるためだけに、山に登ったことがある。(車でだが)
年明けの、まだ寒い時期だった。
東京で以前住んでいた家の近くには、大きな公園があって、よく晴れた日の夜に一人、星空を眺めに行き、イヤフォンから乃木坂46の曲を流しては「いやぁいいわぁ、切ないわぁ…」と浸っていたりした。
これを聞いて、あなたはどう思うだろうか?
ちょっと引くだろうか?
それとも別に普通?
感覚は人それぞれなので、こう思うのが正解ということはないが、世間的には、少し笑われてしまう行動なのかもしれない。実際、私もこの話をした時には「一人で (笑)?」と突っ込まれたこともあったし「病んでるの?」と言われたこともあった。
なので、この話をする時は、少し茶化して言うことにしている。笑い取りに使うこともある (ウケないけど)
でも、本当の気持ちは…
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乃木坂46の楽曲
おっとっと危ない。乃木坂の話だった。
危なく自分語りを延々と始めるところだった。最近肌寒くなってきたので、誰かに今、話を聞いてもらいたいのかもしれない。
乃木坂46の楽曲は、一言で言って、切ない。
ちょっと前の記事になってしまうが、このブログでは乃木坂46の楽曲の歌詞を集めて、何という言葉が一番使われているか?を調べ、上位10位までのランキングを発表した。
そこでは「一人」「孤独」など、切ない言葉も多くランクインした。(※「切ない」は、「切なさ」「切なく」等の表記のゆらぎがあるためかランク外)
また、ひめたんも16th サンクエトワールの楽曲『君に贈る花がない』のMV撮影に、「切なさ100%」で臨んだという。まぁ、そんな引用をしなくても、乃木坂46の楽曲の多くが「切ない」ということは、多くの方に同意いただけることと思う。
切ない気持ち
「切ない」とは何だろうか?改めて辞書を引いてみよう。
「切ない」…悲しさや恋しさで、胸がしめつけられるようである。(goo 辞書)
なるほど。確かに、乃木坂ちゃんの曲を聞くと、それはそれは胸がしめつけられる。きゅーん。ちなみに「悲しみ」という言葉も、先ほどの歌詞ランキングでは7位だった。
まぁ、平たく言えば「シュンとする感じ」とか、「泣きたくなる感じ」だろうか。「センチメンタル」という言葉でもいいかもしれない。(先ほどの辞書によると「センチメンタル」は、感じやすく涙もろいさま)
この、悲しい感じや、センチメンタルを強く感じる人は、まぁ、程度にもよるとは思うけど、とりわけ若い世代にとっては、バカにされてしまう空気があるのではないか?…と感じている。
「なに、悲しみにくれちゃてんのwwww ウケるんですけど草不可避ww」 みたいな。(さすがに性格悪すぎるか…この辺のリアリティは難しい)
すごく身近な言い方をすれば「中二病」だ。
リア充と中二病の時代
「中二病」という言葉も各々でイメージが違うと思うので、ここでは分かりやすく「中二病」=「ポエム的」ととらえていただきたい……
……余計わかりにくくなってしまった。何というか…うーむ、何かいい言葉はないものか。……あ、「クサい」かな。もしくは、「純粋な気持ち」でもいいかもしれない。
そして、中二病は、どうしてもバカにされてしまう対象だ。
一方で「リア充」という言葉がある。ウェーイ、だ (!?) この記事での「リア充」は、もうその名の通り「リアル充実」で、その中でもいわゆる、パーリーピーポー (パリピ) 的な方々と捉えていただいて構わない。
で、「切ない気持ち」っていうのはやっぱり、クサい、中二病側に属するものだと思う。
いやいや、リア充の方にも、例えば失恋したときのような「切なさ」はあるのかもしれない。だが、私のように夜中、一人で星空を眺めながら感じる「切ない気持ち」のマジのやつ?は、恐らくあまり無いのではないか?と思う。
(それでも、人は見かけによらないので分からないし、そもそも人をリア充か中二病かで明確に線引きできるものでもないが、論旨がずれるので、ここでは分かりやすく、一応分類させていただいた。)
リア充が星を見に行くとしたら、マニアックな「しぶんぎ座流星群」を一人見に行くのではなく、「しし座流星群」を見に行くだろう。みんなで。ここ最近はどうか分からないが、「リア充=友達が多い」という構図は、おそらく今でも言えると思う。
(最近は自分の中であまり話題にのぼらないので、感覚が分からない。)
私の個人的な体験では、今から6,7年前、私がまだうら若き20代のころ (泣) は、友達が多いことが良くて、一人はダメだという風潮が、なんとなくあった。
まぁある程度は、いつの時代にもみられる風潮なのかもしれないが、あの頃は各SNSの隆盛も重なって、その傾向はより強くなったように記憶している。
私は、これまで書いてきたように、星を見るために一人で夜中出歩くような人間で、「ぼっち」なんていう言葉が出てきたときには、烙印を押されたような気がして辛かった。
「いやぁ俺はぼっちだからさぁ!」みたいにおどけてみせることもあった。20代の頃はこの、「ひとりぼっちはダメなんだ…」という感覚に、結構、苦しんだものだった。
今も私は引き続き、よく一人でその辺をウロウロしているし、あの頃と環境は変わっても、行動が大きく変わることはない。もっと若いころのように、おおっぴらに誰かに突っ込まれることもないが、今でもたまに、頭の中で、突っ込みの声が聞こえることはある。
「一人で寂しいヤツだな、おまえ」
切なさのトリガー
また、個人的な話になってしまった。乃木坂だ。乃木坂46の14thシングルは『ハルジオンが咲く頃』だった。
この曲について、タイトル発表前の2016年1月当時、表題曲のタイトルは『切なさのトリガー』だという情報が、ネット上でまことしやかに囁かれていた。(検索して後から知ったのだが。)
もちろん、デマだったわけで、出所もよく分からないけれど、とてもいいタイトルだな…と感じた。ちなみに「トリガー」とは、奇しくも「きっかけ」という意味だ。
言葉の響きが美しくて、乃木坂46の楽曲を、上手く表しているなぁと思う。
切なさのトリガー (きっかけ) を、私たちに提供し続けてくれる乃木坂46は、16thシングル『サヨナラの意味』で、ミリオンを達成した。
ひとつの数字に過ぎないし、「握手券」という要素があってのミリオンだということは承知しているつもりだ。それでも乃木坂46の楽曲は、とりわけ若い世代の間で、以前よりも受け入れられてきているように感じる。
お笑い芸人の、カンニング竹山さんが司会を務める、AbemaTV内の番組『業界激震!?マジガチランキング』では、10代男女に様々なアンケートを行い、発表していた。(「10代にガチで人気なアイドル&アーティストが判明!~」 耳マンより)
乃木坂46は、このアンケートで「ガチであなたの好きな音楽アーティスト」の、第5位にランクインしている。女性アイドルグループとしては、一番高い位置だ。
私は、乃木坂の人気がここまで出てきたのは、若い人たちの「切なさ」に対する受容の変化が、理由の一つとしてあると思っている。
私の認識では、切なくて感傷的な楽曲が多く受け入れられていたのは、フォークミュージック全盛の頃だ。それが、時代の移り変わりとともに、若い世代にとっては、フォークは何だかしみったれていて「ダサい」という価値観が生まれてきたように思う。
(もちろんどの時代でも、フォークのような音楽を好む若い世代は、一定数いたと思う。私もその一人だ。あくまで全体として、そういう傾向があった。ということだ。)
でも今は、切なさや悲しい気持ちを、そこまで隠さなくてもいい。フォーク全盛の頃のような、シーンの中心、つまり「センター」とまではいかないが、「切なさ」という要素は、いわば「選抜復帰」ぐらいは、果たしているのではないか?
あくまで女性アイドルシーンの中の、ひとつの潮流だし、単純に雑誌メディア等、「若い世代に届く媒体によく出ているから」というのが、一番の人気の理由なのかもしれない。
だが、感度の高い若い世代が、「切ない気持ち」を歌うアイドルグループを、音楽アーティストとして支持していることには、大きな意味があると思う。
アイドルとしての乃木坂46
もちろん今までも、切ないバラードを歌うアーティストを、若い世代が支持するということはあっただろうし、今でももちろんある。
実際、私が高校生の頃に周りの女子の多くが聴いていたのは、(個人の好みの前提はあるが)、『浜崎あゆみ』だったし、先のアンケートの第2位は『西野カナ』だった。
しかし、乃木坂46は、アイドルグループである。
「アイドル」という言葉から思い浮かぶのは、歌って踊れて、人を笑顔にできるイメージだ。切ない曲も歌うだろうけど、基本は、キラキラとした笑顔で観客を元気づけ、楽しませる存在だ。
実際、いま活動していて、人気を博しているアイドルの多くが、そういう存在だと思う。乃木坂46のように、ここまで「切なさ」を前面に出しているアイドルは、あまりいない。
(もちろん乃木坂も、歌って踊れてキラキラしている。あくまで、グループの全体的なイメージのひとつに「切ない」があるということ。さらに、切なさをコンセプトにしている、他のアイドルもいるとは思うが、乃木坂ほどの認知度はないと思われる。)
人を元気にする「アイドル」というジャンルで、切ない気持ちを送り続ける乃木坂46が、これだけ若い世代に支持されているのは、「切ない」とか、「クサい」ことに対する、一種のアレルギー反応が、以前よりも薄れてきているからではないだろうか?
切ない気持ちになってもいいし、悲しくなったり、泣きたくなったりする気持ちを、ことさら隠す必要もない。「クサいよね、ごめん」と謝る必要も、ない。
私が若いころにはそういう傾向があって、切ない気持ちは、分が悪かった。
ディスるということ
とは言ってもやはり、切ない気持ちやクサいことに対しては、まだまだ素直に受け入れられていない現状があるようだ。それは、例えば、乃木坂好きな大学一年生の方が、Yahoo! 知恵袋に投稿したポストにも、よく表れていると思う。
ずっと感じていたのですが、乃木坂46の夏のFree&Easyを聞いていると僕は、夏の楽しさというより夏の切なさを感じます。僕はこの曲は好きです。ディスっているわけではありません。(Yahoo!知恵袋)
夏の切なさを感じるなんて、とっても素敵なことだと思う。しかもアップテンポな楽曲『夏のFree & Easy』にそれを感じるなんて、豊かな感受性だと思う。
しかし、その言葉の後ろに、「ディスっているわけではない」と断りを入れている。これは、切なさを感じるという発言が、悪い意味に解釈される可能性を考慮して、書いたのだろう。
何かを「切ない」と言うことは、その何かを「ディスっている」と勘違いされるかもしれないと、大学一年生の若い彼 (or彼女) は感じているから、そういう断りを入れているのだと思う。
この例を見ても、まだまだ「切なさ」や「クサい」ことは、分が悪いのかもしれない。もちろんこの例だけでは、一概に断言できるものではないが。あと、別に勝ちたいというわけでもない。
純粋な気持ち
切ない気持ち、しんみりとして、涙が出そうな気持ち。そういう、湧き出てくる「純粋な気持ち」は、やはりまだまだ「クサくてダサい」と思われているのかもしれない。
映画監督で写真家の紀里谷和明さんは、Twitterでこんな発言をされている。
つまり、崩壊させたいものがあれば名前をつければいい。日本において「中二病」という言葉が「純粋さ」という美を殺したように。「偽善」という言葉が善意を曇らせるように。(…以下略) (~Kazuaki Kiriya 紀里谷和明 アカウント -Twitter-)
前後の文脈が追えなかったので、もしかしたら誤解もあるかもしれないが、私がこの紀里谷さんの発言を見て思い浮かべたのは、中二病という言葉の「純粋な気持ち」への心の作用だ。
「中二病」という言葉が、広く認知されたために、何か純粋な気持ち(切ない、悲しい、泣きたくなるような気持ち)を感じたとき、ふと、「あれ、私、中二病かも?」と、セルフツッコミが入って、自分が感じた純粋な気持ちに、蓋をしてしまう…というような状況だ。
私はそれは、とてももったいないことだと思う。ちょっとベクトルは違うけど、いわゆる「意識高い系」も、それに近いのかもしれない。
自分が感じた純粋な気持ち、湧き上がる感情は、誰のものでもない、自分自身の大切な大切な気持ちだ。人目を気にして蓋をするのは、実にもったいないし、それこそ悲しい。ちょっと過激な言い方をすれば、自分へのいじめだとさえ思う。
自信を持っていい。
自分の本当の気持ちは、少なくとも一人でいるときには、自由に感じていい。中二病だなんだと、突っ込む必要はない。アイドルが好きなことにもこれは言える。純粋にそのアイドルが好き、またはアイドルの楽曲が好きなら、その気持ちに蓋をすることはない。
もちろん、「人の迷惑にならなければ」という前提だ。自分が純粋に感じた気持ちで、誰かを傷つけたりするのであれば、それはいったん、飲み込んだ方がいいだろう。これはまぁちょっと、自分に対して言っているところもあるのだが…。
また、だからと言って、切ない気持ちにずーーっと入り込みすぎていると、人との関係を悪くする場合もあるので、「ほどほどに」だ。これも、自戒の意味をこめて書いておこう。
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一人ぼっち
乃木坂46の楽曲は、切ない。そして、その切なさが、若い世代にも受け入れられているところを見ると、私のような切なさ100%人間は、とても勇気が湧いてくる。
このブログでも、乃木坂の楽曲ランキングの記事や、他の楽曲の記事もよく読んでいただいているようで、とてもありがたい。これもひとえに、乃木坂46の、切ない一連の楽曲が、多くの人の心に響いているからだろう。
もちろん、乃木坂46の魅力はそれだけではなく、楽曲だけで言っても、切ない曲もあれば、かわいい曲、ノリノリな曲、元気が出る曲など、バリエーションがたくさんあることも、ここに明記しておく。
切ない気持ちを味わって、しんみりと星空を眺めていてもいいじゃないか。それは誰に邪魔されるものでもない、たった一人の大切な時間だ。
リア充じゃなくても、中二病と呼ばれても、いいじゃないか。それはただ、自分の「純粋な気持ち」に、正直なだけだ。
もし私のように、頭の中で、「一人で寂しいヤツだな、おまえ」と言われたときには、こう言い返してやればいい。
そうだね。
寂しいし、切ないよ。
ちょうど今、その気持ちを味わっているところなんだ。
悪くない気分だよ。
乃木坂46の楽曲が、聴いた人の『切なさのトリガー』になることを願って。